冬の冷たい空気と夏の暖かい空気。音が速いのはどちら?
冬の寒い屋外と、夏の暖かい屋外。
同じ音を鳴らしたとき、音がより速く進むのはどちらでしょうか。
気温が違っても、音の速さは同じように思えますが、実際には少し変わります。
シンプルな答え
暖かい空気のほうが、音は速く進みます。
空気中の音速は、0℃ではおよそ 331 m/s、20℃ではおよそ 343 m/s です。20℃暖かくなると、1秒間に進む距離が約12m長くなります。OpenStax
つまり、
冬の冷たい空気より、夏の暖かい空気のほうが音速は速い
ということになります。
なぜ、暖かいと音が速くなる?
音は、空気そのものが音源から耳まで飛んでくる現象ではありません。
空気の圧力の変化が、隣の空気へ、さらにその隣へと伝わっていく波です。
NASA Glenn Research Centerは、気体中の音速について、

という関係を示しています。
ここで、同じ種類の気体であれば、音速はおおむね絶対温度の平方根に比例します。温度が高くなるほど音速も大きくなります。NASA GRC
空気を構成する分子は、温度が高いほど激しく運動しています。
NASAは、気体中の小さな圧力変化が分子同士の衝突を通して伝わるため、音速が気体の状態、特に温度に依存すると説明しています。NASA GRC
0℃と20℃ではどれくらい違う?
OpenStaxでは、空気中の音速を次の式で表しています。

Tはケルビンで表した絶対温度です。OpenStax
0℃は約273Kなので、
約331 m/s
です。
20℃では約293Kとなり、
約343 m/s
になります。OpenStax
差は約12 m/sです。
割合にすると数%なので、日常生活で「今日は音が明らかに速い」と体感するほどの違いではありません。
それでも、物理的には確実に変化しています。

気温が2倍なら、音速も2倍になる?
なりません。
音速は温度そのものではなく、絶対温度の平方根に比例するからです。
つまり、
絶対温度が高くなる
↓
音速も速くなる
ただし
温度が2倍 → 音速が2倍
ではない
という関係です。
「暖かくなるほど速くなる」という方向は正しいものの、比例して一直線に増えるわけではありません。
音が速くなると、音の高さも変わる?
ここは混同しやすいところです。
気温によって音速が変わっただけでは、音源そのものが出している周波数は変わりません。
波には、

という関係があります。
音速 v が変わり、周波数 f が同じなら、変わるのは波長 λ です。OpenStax
つまり、同じ音叉やスピーカーが同じ周波数の音を出しているなら、
暖かい空気 → 音速が速い → 波長が長くなる
という変化が起こります。
救急車のサイレンが通過すると音の高さが変わる「ドップラー効果」とは、別の現象です。

以前の記事「空気と水ではどちらが速い?」との違い
空気と水を比較すると、音速の違いは非常に大きくなります。
海水中では代表的に約1,500 m/s、空気中では約340 m/sです。
これは、水と空気で密度だけでなく「圧縮されにくさ」が大きく違うためです。OpenStaxでは、流体中の音速を

と表しています。OpenStax
今回の記事は、
違う物質で音速が変わる話
ではなく、
同じ空気でも温度が変われば音速が変わる話
です。
これら記事を合わせて読むと、「音速は一定の数字ではなく、媒質とその状態によって決まる」ということが分かりやすくなります。
飛行機でも気温と音速は重要
音速は航空機にも重要です。
飛行機の速度を表す「マッハ1」は常に同じ時速ではありません。
NASAは、大気の温度が高度によって変化し、それに伴って音速も変化すると説明しています。NASA
そのため、
マッハ1=必ず時速○○km
と固定された値ではありません。
周囲の空気の温度によって、そのときの音速が変わるからです。
1問クイズ
空気中で音が速く進むのはどちらでしょう?
A. 0℃の空気
B. 20℃の空気
C. 温度によって変わらない
正解はBです。
空気中の音速は、0℃で約331 m/s、20℃では約343 m/sです。気体中の音速は絶対温度の平方根に依存するため、暖かい空気ほど速くなります。OpenStax
関連する疑問
「音は空気中と水中、どちらを速く進む?」
「救急車が通り過ぎると、なぜサイレンの音の高さが変わる?」
今回確認した資料
NASA Glenn Research Centerの「Speed of Sound」「Speed of Sound Derivation」では、気体中の音速が気体の種類と絶対温度に依存し、\(a=\sqrt{\gamma RT}\) で表されることを確認しました。NASA GRC
OpenStax University Physicsでは、空気中で0℃の音速が約331 m/s、20℃では約343 m/sであることと、音速・周波数・波長の関係を確認しました。