音の大きさを表すときによく見る「デシベル(dB)」。

40デシベルと80デシベルを比べると、数字はちょうど2倍です。

では、80デシベルの音は40デシベルの音の「2倍の強さ」なのでしょうか。

シンプルな答え

いいえ。80 dBは40 dBの2倍ではありません。

デシベルは、普通のものさしのように数字が比例して増える尺度ではなく、対数を使った尺度です。

音の物理的な強度で比べると、

40 dB → 80 dB

という40 dBの差は、1万倍の強度差に相当します。

OpenStaxでは、音の強度レベルを

β = 10 log₁₀(I / I₀)

と表しています。

この式から、音の強度が10倍になるごとに、デシベルは10 dBずつ増えることが分かります。

10デシベル増えると、音の強度は10倍

40 dBを基準にして考えてみます。

音のレベル40 dBに対する物理的な強度
40 dB1倍
50 dB10倍
60 dB100倍
70 dB1,000倍
80 dB10,000倍

つまり、

80 ÷ 40 = 2

だから「2倍」という計算は、デシベルではできません。

40 dBの差には「10倍」が4回含まれるので、

10 × 10 × 10 × 10 = 10,000

となります。

OpenStaxでも、10 dBの差は強度10倍、20 dBなら100倍、30 dBなら1,000倍になる関係が示されています。

なぜ、こんな分かりにくい目盛りを使うの?

理由の一つは、人間が聞き取れる音の物理的な強さの範囲が非常に広いからです。

OpenStaxが示す基準では、0 dB付近の基準強度は 10⁻¹² W/m²。

一方、120 dBでは 1 W/m² です。

強度で見ると、その差は実に1兆倍あります。

これを毎回「0.000000000001 W/m²」のような数字で表すのは不便です。

そこで、非常に広い範囲を扱いやすい数字に圧縮して表せる対数尺度が使われています。

3デシベル違うだけでも、実は約2倍

10 dBで10倍なら、「2倍」はどのくらいでしょうか。

答えは、およそ3 dBです。

たとえば、物理的な音の強度を比べると、

80 dB → 83 dB

程度の違いで約2倍になります。

CDC/NIOSHの資料でも、デシベルは対数尺度であり、3 dBの増加は音のエネルギーが約2倍、10 dBでは10倍、20 dBでは100倍になると説明されています。

数字だけを見ると「3しか増えていない」のに、物理的にはかなり大きな変化です。

「強度が1万倍」なら、1万倍うるさく感じる?

ここは重要なところです。

そういう意味ではありません。

「音の強度」は、単位面積あたりを通過する音のエネルギーという物理量です。

一方、

「どのくらいうるさく感じるか」

は、人間の聴覚による感覚です。

耳の感じ方は周波数や音の種類、聞く人などによっても変わるため、

物理的な強度が1万倍だから、人間にも1万倍の大きさに感じる

とはいえません。

デシベルが対数尺度になっている背景には、人間の耳が非常に広い強度範囲の音を感じ取れることがあります。OpenStaxも、耳による音の知覚は強度そのものより、その対数によってより適切に表せると説明しています。

「デシベル」と「音の強さ」は同じものではない

ここまでを見ると、

「ではデシベルは音の強さの単位ではないの?」

と思うかもしれません。

厳密には、区別したほうが分かりやすくなります。

音の強度は W/m² のような物理量です。

デシベルは、ある基準との比を対数で表した「レベル」です。

そのため、

「80 dBの音は40 dBの音の2倍」

とは考えられません。

デシベルの数字そのものではなく、数字の差を見るのがポイントです。

「ドップラー効果」と何が違う?

以前の記事では、救急車が近づくとサイレンが高く聞こえ、遠ざかると低く聞こえるドップラー効果を扱いました。

救急車が通り過ぎると、なぜサイレンの音の高さが変わる? 救急車が近づいてくるときはサイレンが高く聞こえ、目の前を通り過ぎると急に低くなったように感じます。 救急車がサイレンそのものの音...

あちらで変化していたのは主に周波数=音の高さです。

今回のデシベルで扱っているのは主に音のレベル=音の大きさに関係する量です。

「高い音」と「大きい音」は、似ているようで別の性質です。

音について考えるときには、

音の高さ → 周波数

音の大きさ → 音圧・音の強度・デシベル

と分けて考えると理解しやすくなります。

1問クイズ

40 dBの音に比べて、物理的な音の強度が約2倍になるのは次のうちどれでしょうか。

A. 41 dB
B. 43 dB
C. 50 dB
D. 80 dB

正解はBの43 dBです。

デシベルでは、約3 dBの増加が音の強度約2倍に対応します。

今回確認した資料

OpenStax「Sound Intensity and Sound Level」
デシベルの定義、10 dB増加と10倍の強度差、基準となる音の強度などを確認しました。

OpenStax「Sound Intensity」
デシベルと音の強度比の対応表、3 dB=約2倍、10 dB=10倍という関係を確認しました。

CDC / NIOSH「Health Hazard Evaluation Report 2023-0087-3401」
デシベルが対数尺度であること、3 dB・10 dB・20 dBの増加と音エネルギーの関係を確認しました。