山に向かって「ヤッホー」と叫ぶと、少し遅れて声が返ってくることがあります。

この「山びこ」が返ってくるまでの時間を測れば、声を反射した山や崖までの距離も分かるのでしょうか。

シンプルな答え

分かります。

音の速さと、音を出してから反響音が戻ってくるまでの時間が分かれば、

距離 = 音速 × 時間 ÷ 2

で求められます。

最後に「÷2」するのは、測っている時間が

自分 → 山 → 自分

という、音の往復時間だからです。

OpenStaxでも、コウモリなどの反響定位について、音を出してから反射音が戻るまでの時間から対象物までの距離を判断できると説明しています。

たとえば、2秒後に山びこが返ってきたら?

気温20℃前後の空気中では、音速はおよそ 343 m/s です。

山に向かって声を出し、2秒後に山びこが返ってきたとします。

まず、音が2秒間に進んだ距離は、

343 m/s × 2秒 = 686 m

です。

ただし、この686 mは

山まで行く距離 + 山から戻る距離

を合わせたものです。

したがって、

686 ÷ 2 = 343 m

となります。

つまり、反射した場所は約343 m先と考えられます。

なぜ「÷2」が必要なの?

図にすると単純です。

あなた →→→ 山

ここまでが「行き」です。

そのあと、

山 →→→ あなた

と音が戻ってきます。

ストップウォッチで測っているのは、

行き + 帰り

にかかった時間です。

そのため、

音速 × 時間

で計算すると「往復した距離」が出ます。

山までの片道距離を知りたいので、最後に2で割ります。

この原理は山びこだけでなく、SONARで海底までの深さを測る場合にも使われています。

NOAAの教材でも、送った音が海底などで反射して戻るまでの時間は「往復時間」なので、

距離 = 音速 × 往復時間 ÷ 2

として計算すると説明されています。

山びことSONARは、実はほぼ同じ考え方

船から海底へ音を出したとします。

音は、

船 → 海底 → 船

と往復します。

音を出してから反射音が戻ってくるまでの時間と、水中での音速が分かれば、海底までの距離を求められます。

これが音響測深やSONARで使われている基本的な考え方です。

NOAAによると、アクティブSONARでは音のパルスを水中へ送り、物体から返ってきたエコーを受信します。その送信から受信までの時間を使って、物体までの距離などを求めます。

水中では音速がおよそ 1,500 m/s と空気中よりかなり速いため、海中ではその水中音速を使って計算します。

コウモリも同じ原理を使っている

この方法を使っているのは人間だけではありません。

コウモリは音を発し、その反射音を聞くことで周囲の物体や獲物の位置を把握します。

イルカやクジラなども、反射した音を利用します。

OpenStaxでは、このように反射音を利用して物体を見つける方法を反響定位(echolocation)と説明しています。

反射音が返ってくるまでの時間が長ければ遠く、短ければ近いと判断できます。

さらに左右の耳へ届く反射音の違いなどから、方向や形についても情報を得ることができます。

つまり単なる「山びこ」は、距離を測るための重要な情報でもあります。

音なら、どんな距離でも正確に測れる?

実際には、それほど単純ではありません。

まず、音速が一定とは限りません。

空気中の音速は気温によって変化します。

前の記事で確認したように、空気中では0℃で約331 m/s、20℃では約343 m/sです。

水中でも、温度や圧力、塩分などによって音速は変化します。

そのため、精密な距離測定をする場合には、その場所の音速を正しく見積もる必要があります。

音が複数回反射するとどうなる?

山や建物が複数ある場所では、反射音が一つだけ返ってくるとは限りません。

近い崖からの反射音が先に届き、そのあと遠くの山から別の反射音が届くこともあります。

さらに建物の中では、壁・床・天井などで何度も音が反射します。

こうした反射音が次々と重なる現象が残響です。

一つの明確な反射音が遅れて聞こえる「エコー」と、多数の反射音が重なって音が残る「残響」は、似ていますが少し違います。

距離を測るには、「どの反射音がどの物体から戻ってきたものなのか」を区別することが重要になります。

「1秒後に返ってきたら170m」はだいたい正しい?

空気中の音速を約340 m/sとすると、

1秒の往復距離は約340 mです。

片道はその半分なので、

約170 m

となります。

そのため、

山びこが1秒後 → 約170 m先

2秒後 → 約340 m先

3秒後 → 約510 m先

というのが、おおまかな目安になります。

ただし実際の値は気温などで少し変わります。

1問クイズ

山に向かって声を出したところ、3秒後に山びこが返ってきました。

音速を340 m/sとすると、山までの距離はおよそ何mでしょうか。

A. 170 m
B. 340 m
C. 510 m
D. 1,020 m

正解はCの510 mです。

音が往復した距離は、

340 × 3 = 1,020 m

です。

片道距離なので、

1,020 ÷ 2 = 510 m

となります。

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今回の記事は、その音速を実際に使って距離を測る方法です。

3つを続けて読むと、

音速は何で決まる? → 条件でどう変わる? → どう利用する?

という流れで理解できます。

今回確認した資料

OpenStax「Speed of Sound, Frequency, and Wavelength」
コウモリなどの反響定位で、反射音が戻るまでの時間から距離を判断する原理を確認しました。

NOAA Ocean Exploration「Sonar」
アクティブSONARが音を送り、返ってくるエコーの時間から物体までの距離を測ることを確認しました。

NOAA Okeanos Explorer Education Materials
SONARでの距離計算が「音速 × 往復時間 ÷ 2」で表されることを確認しました。