牛乳はコップからさらさら注げるのに、ヨーグルトになるとスプーンですくえるほど固くなります。

冷やして凍らせているわけでも、水分を大きく減らしているわけでもありません。

シンプルな答え

変わっているのは、牛乳の中にある「たんぱく質の状態」です。

乳酸菌が牛乳に含まれる乳糖を利用して乳酸を作ると、牛乳はだんだん酸性になります。

すると、牛乳中のたんぱく質「カゼイン」が互いに集まり、網目のような構造を作ります。その網目の中に水分などが抱え込まれることで、さらさらだった牛乳がヨーグルトらしい固さになります。

図で見ると

牛乳

カゼインの小さな粒が
水分の中に分散している

↓

乳酸菌が乳糖を利用

↓

乳酸が増える

↓

pHが下がる

↓

カゼイン同士が集まる

↓

網目状のゲルができる

↓

水分を抱え込む

↓

ヨーグルトのように固まる

つまり、「水が固体になった」のではありません。

たんぱく質が作った網目の中に、たくさんの水分を抱え込んだ状態です。

詳しく見てみる

牛乳には、脂肪や糖、ミネラルなどとともに、たんぱく質が含まれています。

その乳たんぱく質の大部分を占めるのが「カゼイン」です。カゼインは牛乳の中では、カゼインミセルと呼ばれる非常に小さな粒のような状態で分散しています。

普通の牛乳では、こうした粒が簡単にはくっつかないため、牛乳は液体の状態を保っています。

ところが、ヨーグルト作りでは乳酸菌が働きます。

乳酸菌は牛乳中の乳糖を利用しながら乳酸を作ります。乳酸が増えるにつれて牛乳のpHは下がっていき、酸性に傾きます。日本乳業協会も、ヨーグルトは乳酸菌が作る乳酸によってカゼインが集まり、固まると説明しています。

pH4.6付近で何が起きる?

重要なのが、カゼインの「等電点」と呼ばれる状態です。

カゼインはpHが4.6付近まで下がると、粒同士を離していた力が弱まり、互いに集まりやすくなります。

集まったカゼインは単なる大きな塊になるだけではなく、立体的な網目構造を作ります。この構造が水分や乳糖、ミネラルなどを内部に抱え込みます。

そのため、見た目には「牛乳そのものが固まった」ように見えるのです。Wisconsin Center for Dairy Researchでも、乳酸発酵でpHが低下すると乳たんぱく質が凝集してゲルを作ることが説明されています。研究でも、ヨーグルト発酵における酸性化とカゼインのゲル形成の関係が確認されています。

ヨーグルトが酸っぱいのも同じ理由

ヨーグルトが固くなることと、酸っぱくなることは別々の現象ではありません。

どちらにも乳酸が関係しています。

乳酸菌が乳糖から乳酸を作る
→ 酸味が生まれる
→ pHが下がる
→ カゼインが集まる
→ ヨーグルトが固まる

という一続きの変化です。

つまり、ヨーグルトの「酸っぱさ」と「固さ」には共通の原因があります。

上に出てくる透明な液体は何?

ヨーグルトを開けたとき、表面に透明や薄黄色の液体がたまっていることがあります。

これは「ホエイ(乳清)」です。

カゼインが作ったゲルの網目には水分が抱え込まれていますが、ゲルが収縮したり、スプーンですくって構造が崩れたりすると、その一部が外へ出てきます。

日本乳業協会も、ヨーグルトの上に出る液体はホエイであり、カードと呼ばれる固まりが収縮したり切断されたりすることで分離することがあると説明しています。

したがって、少量のホエイが出ているだけで「ヨーグルトが腐った」と判断する必要はありません。

では、飲むヨーグルトはなぜ液体?

ここまで読むと、

「ヨーグルトはカゼインが網目を作るから固まるのなら、飲むヨーグルトはなぜ液体なの?」

という疑問も出てきます。

実は、飲むヨーグルトも一度ヨーグルトとして固まったものを、発酵後に攪拌して液状にするタイプがあります。

つまり、牛乳のように最初から固まっていないのではなく、できたゲル構造を細かく崩すことで流動性を持たせています。日本乳業協会でも、飲むヨーグルトは発酵後に固まったヨーグルトを攪拌して液状にすると説明されています。

牛乳に酢を入れて固まるのも同じ仕組み?

基本的な部分は同じです。

牛乳に酢やレモン果汁などの酸を加えてもpHが下がり、カゼインが集まります。そのため牛乳に酸を加えると、白い固まりができることがあります。

ただし、ヨーグルトでは乳酸菌が発酵によって乳酸を作ります。

その過程では酸だけでなく、ヨーグルト独特の風味に関係する成分なども作られます。単に牛乳へ酸を加えることと、乳酸菌による発酵はまったく同じではありません。

もう少し詳しく:牛乳を先に加熱するのにも意味がある

ヨーグルト作りでは、発酵前の牛乳を加熱する工程があります。

もちろん衛生面のための加熱でもありますが、ヨーグルトの食感にも関係します。

加熱によって乳清たんぱく質の構造が変化すると、カゼインと結びつきやすくなり、よりしっかりしたゲルを形成することがあります。これによって水分を保持しやすくなり、ホエイの分離を抑える方向に働くこともあります。

ヨーグルトの固さは「乳酸菌が入っているかどうか」だけで決まるわけではありません。

使う乳、乳酸菌の種類、たんぱく質量、加熱条件、発酵温度や時間などによっても食感は変わります。

1問クイズ

ヨーグルトが固まる直接的な仕組みに最も近いものはどれでしょう?

A. 牛乳の水分がすべて蒸発する
B. 乳酸でpHが下がり、カゼインが集まる
C. 牛乳の脂肪がすべて凍る
D. 乳糖がすべて固体になる

正解:B

乳酸菌が作った乳酸によってpHが低下すると、カゼインが集まって網目状のゲルを作ります。その中に水分が抱え込まれることで、ヨーグルトらしい固さが生まれます。

今回確認した資料

一般社団法人日本乳業協会「牛乳に酢や果汁を入れると一部が固まるのはなぜですか?」

一般社団法人日本乳業協会「ヨーグルトはどのように作るのですか?」

一般社団法人日本乳業協会「ヨーグルトの上に出ている液体は何ですか?」

Wisconsin Center for Dairy Research「Yogurt Monograph Series: Production」

「Real-Time Monitoring of Yogurt Fermentation Process by Aquaphotomics Near-Infrared Spectroscopy」