台風はなぜ暖かい海で生まれ、陸に上がると弱くなるの?
夏から秋になると、日本の南の海上で台風が発生し、発達しながら北上してくることがあります。
台風は強い風と大雨をもたらす巨大な渦ですが、もともとは海の上にできた雲の集まりから始まります。
では、なぜ台風は暖かい海の上で生まれるのでしょうか。
そして、強い台風でも陸に上がると弱まりやすいのはなぜなのでしょうか。
シンプルな答え
台風は、暖かい海から供給される大量の水蒸気を利用して発達する巨大な「熱機関」のようなものです。
海水が蒸発して水蒸気になり、その空気が上昇して雲になるときに熱が放出されます。
その熱によって上昇気流がさらに強まり、中心の気圧が下がります。すると周囲から暖かく湿った空気がさらに流れ込み、台風が発達していきます。
ところが陸に上がると、海からの熱と水蒸気の供給が大きく減ります。
さらに陸地との摩擦も大きくなるため、台風は一般に弱まりやすくなります。
そもそも「台風」とは何?
熱帯や亜熱帯の海上にできる低気圧を、広く熱帯低気圧と呼びます。
日本の気象庁では、そのうち北西太平洋または南シナ海に存在し、低気圧域内の最大風速(10分間平均)がおよそ17m/s以上になったものを「台風」と呼んでいます。
つまり、
熱帯低気圧と台風はまったく別の現象ではありません。
熱帯低気圧が発達し、日本付近で使われる基準以上の強さになったものが台風です。
参考:気象庁「台風とは」
台風の出発点は暖かい海
台風が発生するために重要なのが、暖かい海です。
気象庁は、一般に台風は海面水温が26〜27℃程度の海域で発生すると説明しています。
NOAAも、熱帯低気圧の発達には26.5℃以上の暖かい海水が比較的深いところまで存在することが重要だと説明しています。
ただし、
海面水温が高ければ、それだけで台風ができるわけではありません。
大気の状態や風の条件など、いくつもの条件がそろう必要があります。
参考:気象庁「海洋について」
参考:NOAA Ocean Service「How do hurricanes form?」
まず、海から大量の水が蒸発する
暖かい海では、海水から水が盛んに蒸発し、水蒸気となって空気中へ移動します。
暖かく湿った空気は上昇しやすく、上空へ昇るにつれて気圧が低くなり、空気は膨張して冷えていきます。
すると、水蒸気が小さな水滴や氷の粒へ変わり、雲ができます。
ここで、台風の発達にとても重要なことが起きます。
水蒸気が雲になるとき、「熱」が放出される
液体の水が蒸発して水蒸気になるには、エネルギーが必要です。
そのエネルギーは、水蒸気の中にいわば蓄えられた状態になります。
反対に、水蒸気が冷えて水滴になる、つまり凝結すると、そのエネルギーが熱として大気中へ放出されます。
この熱によって周囲の空気が暖められると、空気はさらに上昇しやすくなります。
すると、
上昇気流が強くなる
↓
地表付近の気圧が下がる
↓
周囲から暖かく湿った空気が流れ込む
↓
さらに大量の水蒸気が上昇する
↓
雲ができ、さらに熱が放出される
という循環が生まれます。
気象庁は、台風が暖かい海面から供給された水蒸気が雲粒になるときに放出する熱をエネルギーとして発達すると説明しています。
参考:気象庁「台風とは」
積乱雲が集まり、巨大な渦へ成長する
熱帯の暖かい海上では、強い上昇気流によって積乱雲が発生します。
最初はそれぞれ別々の積乱雲ですが、条件がそろうと多くの積乱雲が集まり始めます。
気象庁の「台風の一生」では、
積乱雲が多数まとまる
↓
渦を形成する
↓
中心付近の気圧が下がる
↓
熱帯低気圧になる
↓
さらに発達して台風になる
という流れが説明されています。
参考:気象庁「台風の一生」
なぜ台風は回転するの?
台風は上から見ると巨大な渦になっています。
北半球の台風は、反時計回りに回転します。
これは地球が自転していることによって生じるコリオリの効果が関係しています。
中心付近の気圧が下がると、周囲から空気が中心へ向かって流れ込みます。
しかし地球が回転しているため、その空気は中心へ真っすぐ入るのではなく、進む向きが曲げられます。
その結果、低気圧の周囲を回転する流れが生まれます。
なお、赤道のすぐ近くではコリオリの効果が弱いため、強い熱帯低気圧が発達するには赤道からある程度離れていることも重要です。
Met Officeは、熱帯低気圧の発生条件として、赤道から十分離れて地球の自転による回転の効果を受けられることを挙げています。
参考:Met Office「Development of tropical cyclones」

暖かい海でも、台風ができないことがある
海面水温が27℃を超えているからといって、そこに必ず台風ができるわけではありません。
NOAAやMet Officeは、熱帯低気圧が発達するためには、暖かい海以外にもいくつかの条件が必要だと説明しています。
たとえば、
- もともと空気が集まりやすい低圧部や気象の乱れがある
- 積乱雲が発達できる
- 地上と上空で風向や風速が大きく違いすぎない
- 赤道からある程度離れている
といった条件です。
特に、上空と下層で風の向きや強さが大きく違う状態を鉛直ウインドシアが強いといいます。
ウインドシアが強すぎると、発達した積乱雲の構造が傾いたり崩れたりして、台風としてまとまりにくくなります。
つまり、暖かい海は重要な条件ですが、台風を作る材料の一つと考えるほうが正確です。
なぜ上陸すると弱くなるの?
強い台風でも、陸に上がると一般に弱まり始めます。
大きな理由は、台風を動かしていた「燃料」の供給が減るからです。
海上では、
暖かい海
↓
大量の水蒸気
↓
雲ができる
↓
熱が放出される
↓
上昇気流が強まる
という循環を続けられます。
ところが陸上では、暖かい海面からの水蒸気と熱の供給を受け続けることができません。
NOAAは、熱帯低気圧が上陸後に急速に弱まり始める主な理由について、海から供給されていた水分と熱を失うことを挙げています。
参考:NOAA「Tropical Cyclone Introduction」
「陸との摩擦だけで弱くなる」わけではない
陸上には、山や建物、森林などがあります。
海面よりも地表面が複雑なため、風に対する摩擦が大きくなることも台風を弱める要因です。
ただし、
台風が上陸すると弱くなる理由を、摩擦だけで説明するのは正確ではありません。
NOAAは、上陸後の急速な弱まりでは、海から供給されていた熱と水蒸気を失うことが非常に重要だと説明しています。
つまり、
燃料が減ること+陸地との摩擦
の両方が関係しているのです。

上陸した瞬間に安全になるわけではない
台風が上陸して弱まり始めても、すぐに雨や風がなくなるわけではありません。
気象庁は、台風が最大風速17m/s未満になって「熱帯低気圧」に変わった場合でも、強い雨が続くことがあるため注意が必要だと説明しています。
また、日本付近まで北上すると、周囲の寒気などの影響を受けて温帯低気圧に変わることもあります。
温帯低気圧になったからといって、「消滅した」という意味ではありません。
性質が変わったあとに再び発達し、広い範囲で強風や大雨をもたらす場合もあります。
参考:気象庁「台風の一生」
台風は自分で海面を冷やすこともある
強い台風が通過すると、その進路に沿って海面水温が下がることがあります。
理由の一つは、強風によって海面の蒸発が盛んになり、海から熱が奪われることです。
さらに、台風の強い風が海をかき混ぜ、深い場所にある冷たい海水が表面付近まで上がってくることもあります。
つまり台風は暖かい海からエネルギーを受け取る一方で、自分自身が通った海を冷やすこともあるのです。
台風は、海と大気がつながって生まれる現象
台風を「巨大な風の渦」とだけ考えると、なぜ発生するのかは分かりにくくなります。
実際には、
太陽に暖められた海
↓
海水が蒸発する
↓
暖かく湿った空気が上昇する
↓
水蒸気が雲になり、熱を放出する
↓
上昇気流が強まる
↓
中心の気圧が下がる
↓
周囲からさらに空気が流れ込む
↓
地球の自転の影響を受けながら渦が発達する
という、海と大気のエネルギーのやり取りによって生まれています。
そして陸に上がると、その循環を支えていた海から離れるため、弱まりやすくなります。
台風は、暖かい海のエネルギーを大気の巨大な渦へ変換する現象と考えると、発生から衰弱までを理解しやすくなります。
関連する疑問
台風は、多数の発達した積乱雲が集まった巨大な気象システムです。
続けて読むと、雲を作る水滴や氷の粒と、光の散乱によって雲が白く見える仕組みを確認できます。
今回確認した資料
気象庁
「台風とは」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-1.html
気象庁
「台風の一生」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-2.html
気象庁
「海洋について」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq9.html
気象庁
「台風による水温の低下」
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/db/kaikyo/knowledge/taifuu_suionteika.html
NOAA Ocean Service
「How do hurricanes form?」
https://oceanservice.noaa.gov/facts/how-hurricanes-form.html
NOAA JetStream
「Tropical Cyclone Introduction」
https://www.noaa.gov/jetstream/tropical/tropical-cyclone-introduction
Met Office
「Development of tropical cyclones」
https://weather.metoffice.gov.uk/learn-about/weather/types-of-weather/hurricanes/development