コップに水と氷を入れると、氷は水面に浮かびます。

同じ水からできているのに、なぜ氷は沈まないのでしょうか。

シンプルな答え

その理由は、水が凍るときに起こる、水分子の並び方の変化にあります。

氷が水に浮くのは、水が凍ると体積が増え、液体の水より密度が小さくなるからです。

水が凍ると、水分子が規則正しく並んだ結晶構造を作ります。この構造では分子同士の間に比較的大きな空間ができるため、同じ質量でも液体の水より大きな体積を占めるようになります。

その結果、氷は水より密度が小さくなり、水に浮くのです。

参考:USGS「Water Density(水の密度)」

水が氷になると、何が変わる?

普段、私たちが目にする液体の水も氷も、基本的には同じH₂Oという分子からできています。

違うのは、水分子の動きや並び方です。

液体の水の場合

液体の水では、水分子が絶えず動き回っています。

水分子同士は「水素結合」と呼ばれる相互作用で結びついていますが、その結びつきは組み替わりながら変化しています。

そのため、分子は比較的詰まった状態になることができます。

氷の場合

水が凍ると、水分子の並び方が規則的になり、安定した結晶構造が作られます。

私たちが普段目にする氷は、主に六角形を基本とする結晶構造を持っています。

この構造では、水分子が互いに一定の関係を保って並ぶため、分子の間に空間が生まれます。

つまり、水が凍ると分子そのものが大きくなるのではなく、分子の並び方が変わって、全体として場所を多く取るようになるのです。

参考:NOAA「How Does Arctic Sea Ice Form and Decay?」

図で見ると

液体の水と氷の分子の並び方を比較すると、この違いが分かりやすくなります。

液体の水では分子が動きながら比較的詰まった状態を作っていますが、氷では規則的な結晶構造ができるため、分子間に比較的大きな空間が生まれます。

※図は仕組みを単純化した模式図です。実際の分子の形、大きさ、配置を正確な縮尺で表したものではありません。

氷になると体積はどれくらい増える?

では、水が凍ると体積はどれくらい変わるのでしょうか。

USGSによると、氷の密度は液体の水よりおよそ9%小さくなります。

また、NOAAの教材では、代表的な値として次の数字が示されています。

状態密度の目安
液体の水約1.00 g/cm³
氷約0.92 g/cm³

密度とは、一定の体積の中にどれだけ質量があるかを示すものです。

同じ体積を比べると、氷の方が質量が小さいということになります。

反対に、同じ質量の水と氷を比べると、氷の方が大きな体積を占めます。

たとえば、約100 cm³の水が凍ると、単純計算では約109 cm³の氷になると考えられます。

これは代表値による概算であり、温度や条件によって実際の値は異なります。

参考:NOAA「Icebergs」教材(PDF)

氷はどれくらい水面から出ている?

氷が水に浮いているとき、実は氷の大部分は水面の下にあります。

一般的な氷の密度は液体の水の約92%なので、淡水に浮かぶ氷では、体積のおよそ9割が水中に沈み、残りが水面から出ることになります。

ここで関係するのが「浮力」です。

水の中に物体を入れると、その物体は周囲の水から上向きの力を受けます。

これが浮力です。

物体が押しのけた水の重さに相当する浮力を受け、氷自身の重さと浮力がつり合うところで浮かびます。

氷は水より密度が小さいため、全体が沈み切る前につり合いが生まれます。

海に浮かぶ氷山も、基本的には同じ仕組みです。ただし、海水は塩分を含み、真水より密度が大きいため、氷が水面から出る割合は淡水の場合と少し異なります。

水は4℃付近で最も密度が大きくなる

水には、もう一つ興味深い性質があります。

一般的な物質は、温度が下がるにつれて体積が小さくなり、密度が大きくなる傾向があります。

液体の水も、ある程度までは同じです。

ところが、普通の圧力のもとでは、水は約4℃で密度が最大になります。

4℃からさらに冷やすと、氷になる前の液体の段階でも、密度が少しずつ小さくなるのです。

これは、水分子同士の水素結合による構造が、温度の低下とともに変化するためです。

しかし、実は水の密度が最も大きくなる温度が約4℃という性質は、自然界で重要な役割を果たしているのです。

参考:USGS「Water Density」

冬の湖が表面から凍るのも、水の性質が関係している

寒い冬、湖や池の水は通常、表面から凍り始めます。

これも、水の密度の特徴と深く関係しています。

水面の温度が下がると、最初は冷やされた水の密度が大きくなるため、下の方へ沈んでいきます。

しかし、約4℃よりさらに冷えると、逆に密度が小さくなります。

その結果、4℃より冷たい水は表面付近にとどまりやすくなり、やがて凍り始めます。

できた氷は水より密度が小さいため、表面に浮いたままになります。

さらに、水面を覆う氷は外気と水との熱の移動を抑える働きもします。

このため、冬の湖では表面が凍っていても、その下には液体の水が残ることがあります。

魚などの水生生物が冬を越せる理由の一つには、こうした水の特殊な性質があるのです。

参考:NOAA「How Does Arctic Sea Ice Form and Decay?」

氷が水に沈んでいたら、どうなっていた?

もし氷の方が液体の水より密度が大きければ、凍った氷は底へ沈んでいくことになります。

すると、湖や池では現在とは異なる凍り方が起き、冬の水中環境も大きく変わっていたと考えられます。

しかし、実際には、氷は水より密度が小さいため、水面に浮かびます。

そして水面の氷が、下にある水を外の寒さからある程度守る役割を果たしてくれています。

普段、コップの中で何気なく見ている氷の浮き方は、自然界の水環境ともつながっているのです。

関連する疑問

海の水が塩辛い、その塩はどこから来た?

海水には塩分が含まれており、そのことが水の密度にも影響します。氷の浮き方を理解したあとに読むと、真水と海水の性質の違いにも知識が広がります。

今回確認した資料

米国地質調査所(USGS)「Water Density」

水と氷の密度、氷が浮く理由、水が約4℃で最大密度になる性質、湖の凍結への影響を確認しました。

https://www.usgs.gov/water-science-school/science/water-density

米国海洋大気庁(NOAA)「How Does Arctic Sea Ice Form and Decay?」

氷の六方晶構造と水素結合、水の温度と密度の関係、湖や海の表面が凍る仕組みを確認しました。

https://www.pmel.noaa.gov/arctic-zone/essay_wadhams.html

米国海洋大気庁(NOAA)「Icebergs」教育教材(PDF)

水と氷の密度の代表値、凍結による体積増加、浮力について確認しました。

https://gml.noaa.gov/education/info_activities/pdfs/MAA_icebergs.pdf