ボールペンのキャップに穴が開いているものがあるのはなぜ?
ボールペンのキャップの先端に、小さな穴が開いているのを見たことはありませんか。
インクを乾きにくくするためでしょうか。それとも、空気を逃がしてキャップを外しやすくするためでしょうか。
実は、一部のボールペンでは、この小さな穴が安全のために設けられています。
シンプルな答え
キャップを誤って吸い込んでしまった場合に、窒息する危険性を少しでも減らすためです。
小さなキャップが気道に詰まると、空気の通り道がふさがれてしまうおそれがあります。
そこで一部の筆記具には、キャップが気道に入ってしまった場合でも、空気が通る経路を確保できるように穴が設けられています。
ただし、穴があれば窒息を必ず防げるという意味ではありません。 あくまで危険性を軽減するための設計です。
なぜキャップに穴が必要なの?
ボールペンのキャップは小さく、簡単に取り外すことができます。
特に子どもがキャップを口に入れ、誤って吸い込んでしまうと、気道に入り込む危険があります。
もしキャップが気管をふさいでしまうと、呼吸に必要な空気が通れなくなります。
こうした危険性を減らすために考えられたのが、空気を通す構造を持つキャップです。
穴や通気経路が設けられていれば、万一気道に入り込んでしまった場合に、空気が通る余地を残せる可能性があります。
もちろん、穴のあるキャップでも、気道に詰まれば危険な状態になり得ます。子どもがキャップを口に入れないようにすることが最も重要です。

キャップの安全性には国際規格がある
筆記具のキャップの安全性については、国際標準化機構(ISO)が規格を定めています。
それが ISO 11540:2021 です。
正式名称は Writing and marking instruments — Specification for caps to reduce the risk of asphyxiation で、日本語では「筆記具・マーキング用具の窒息リスクを低減するキャップの仕様」といった意味です。
この規格は、通常の使用状況や予測できる使用状況で、14歳以下の子どもが使う可能性のある筆記具などを対象としています。
キャップによる窒息リスクを低減するために、キャップの大きさや通気性などに関する要求事項が設けられています。
ここで重要なのは、すべてのボールペンのキャップに穴を開けなければならない、という規格ではないことです。
例えば、気道に入り込みにくい大きさにすることも、安全対策の一つです。
また、成人専用として設計された高価な万年筆や専門的な製図用ペンなど、一部の筆記具は規格の適用対象外とされています。
詳しくはISO公式サイト「ISO 11540:2021」で確認できます。
BICのボールペンにも安全のための穴がある
ボールペンメーカーのBICは、代表的な製品「BIC Cristal」の構造を、75周年記念の公式資料で紹介しています。
この資料では、キャップの穴について、英国規格「BS 7272-1」への適合を目的とした構造であることが説明されています。
つまり、キャップの穴は偶然できたものでも、単なるデザインでもなく、安全規格に対応した設計の一部なのです。
参考:BIC Cristal 75周年公式資料(PDF・10ページ)
実は、ペンの軸にも穴があることがある
ここで少し紛らわしいのが、キャップではなく、ボールペンの本体側に開いている穴です。
BIC Cristalの公式資料では、透明な六角形の軸にある穴について、ペンの内部と外部の圧力を調整する役割が説明されています。
インクを入れた管の周囲にある空間の圧力を適切に保ち、インクの流れや漏れを防ぐことに関係する設計です。
つまり、同じボールペンの「穴」でも、目的が違います。
| 穴の場所 | 主な目的 |
|---|---|
| キャップの穴 | 誤って吸い込んだ場合の窒息リスクを軽減する |
| ペン軸の穴 | 内部と外部の圧力を調整し、インクの流れに関わる |
※BIC Cristalの設計例です。すべてのボールペンの穴が同じ目的とは限りません。

穴があれば子どもにとって安全なの?
穴のあるキャップでも、決して安全が保証されるわけではありません。
ISO 11540:2021の目的は、キャップによる窒息リスクをなくすことではなく、低減することです。
通気性を持たせる設計は、万一の事故で危険な状態に至るまでの時間を延ばし、救命処置につながる可能性を高めるための対策でもあります。
そのため、キャップを口に入れたり、かんだり、吸い込んだりしないことが大前提です。
小さな子どものいる家庭では、取り外せるキャップを手の届かない場所に保管することも大切です。
小さな穴にも理由がある
毎日何気なく使っているボールペンですが、キャップの小さな穴にも、安全性を考えた設計が隠されています。
さらに、同じペンの軸にある穴には、インクを適切に流すという別の目的がある場合もあります。
次にキャップ付きのボールペンを手に取ったときは、キャップと本体の両方を見比べてみると、身近な道具に込められた工夫を発見できるかもしれません。
今回確認した資料
国際標準化機構(ISO)「ISO 11540:2021」
筆記具などのキャップによる窒息リスクを減らすための国際規格です。適用対象、規格の目的、対象外となる筆記具などを確認できます。
https://www.iso.org/standard/81889.html
BIC「BIC Cristal 75 years of inspiration」
BIC Cristalの構造を図解した公式資料です。10ページに、キャップの穴と軸の穴の目的がそれぞれ説明されています。
https://mediabic.bic.com/image/upload/v1758021347/Press_kit_BIC_Cristal_75_ans_EN_6d77fc7443.pdf
GCC Standardization Organization「GSO ISO 11540:2025」
ISO 11540:2021を技術的な変更なしで採用した地域規格の公開資料です。誤飲・吸引による気道閉塞の危険性と、通気構造などによるリスク低減の考え方を確認できます。
https://gso-sims-preview-doc-aws.s3-eu-west-1.amazonaws.com/gso-iso-11540-2025-en.html