飛行機が高度1万メートルほどを飛んでいるとき、窓の外は人がそのまま長時間過ごせる環境ではありません。

それなのに、機内では酸素マスクを付けることもなく、普通に会話したり食事をしたりできます。

シンプルな答え

その理由は、飛行機が客室を「与圧」しているからです。

旅客機の客室には空気が供給され、外より高い圧力に保たれています。

ただし、機内を海面とまったく同じ気圧にしているわけではありません。高度1万メートル付近を飛んでいても、客室内はもっと低い山にいる程度の気圧になるよう制御されています。

FAAの資料では、一般的な与圧システムについて、最大運用高度でも客室高度をおよそ8,000フィート(約2,400メートル)程度に保つ仕組みが説明されています。連邦航空局

図で見ると

つまり、飛行機そのものは非常に高い場所を飛んでいても、人がいる客室だけ別の気圧環境を作っているわけです。

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では、どうやって客室の圧力を保っているのでしょうか。

ポイントは、「空気を入れる」だけではありません。

客室へ空気を供給しながら、アウトフローバルブ(outflow valve)と呼ばれる弁で、機外へ出す空気の量を調節します。

FAAのPilot’s Handbookでは、空気の流入を一定にしつつ、アウトフローバルブで流出量を調節することで客室の圧力を制御する仕組みが説明されています。連邦航空局

イメージとしては、

入ってくる空気 > 出ていく空気

となれば客室の圧力は上がり、

出ていく量を増やす

と客室の圧力は下がります。

実際にはコンピューターなどがこれを制御し、飛行機が上昇・巡航・降下しても、乗客に急激な圧力変化が起こりにくいよう調整しています。

なぜ海面と同じ気圧にしないの?

客室を海面と同じ気圧に保つほど、飛行機の外側と内側の圧力差は大きくなります。

すると、機体にはそれだけ大きな力がかかります。

そこで、乗客が安全に過ごせる範囲を確保しながら、機体にかかる圧力差も考えて客室の気圧が設定されています。

FAAの輸送機に関する認証資料では、通常運航時の客室高度について、最大運用高度で8,000フィート以下とする基準が示されています。連邦航空局

ここでいう「客室高度」は、飛行機そのものの高度ではありません。

「客室の気圧を、標高に置き換えると何メートルくらいか」

という考え方です。

だから飛行機の窓にも大きな力がかかる

この「機内と機外の圧力差」は、前の記事ともつながります。

高度を上げると外の気圧は低下しますが、客室は与圧されています。そのため、胴体や窓には内側から外側へ押す力がかかります。

飛行機が上昇・降下するたびに、この圧力差も繰り返し変化します。

そのため、旅客機では機体構造だけでなく窓の形も重要になります。

/why/airplane-window-round/

この記事も読むと、

与圧する → 機内外に圧力差が生まれる → 機体に力がかかる → 窓の形も重要になる

という一連の仕組みが理解できます。

もし与圧できなくなったら?

与圧が失われると、「客室高度」が急に上がることがあります。

高い高度では酸素不足、つまり低酸素症が問題になります。FAAがまとめたHelios Airways 522便の事例でも、与圧が適切に維持されず、乗員が低酸素症で行動不能になったことが事故の重要な要因として説明されています。連邦航空局

旅客機に酸素マスクが備えられているのは、このような場合に備えるためです。

1問クイズ

飛行機の客室の気圧を保つときに重要な役割をするものはどれ?

A. フラップ
B. アウトフローバルブ
C. ランディングギア
D. スポイラー

正解:B. アウトフローバルブ

客室へ空気を供給するだけでなく、外へ出ていく空気の量を調節することで、客室の圧力を制御しています。連邦航空局

今回確認した資料

FAA「Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge」
客室与圧、客室高度、アウトフローバルブなどの基本的な仕組みを確認しました。連邦航空局

FAA「AC 25-7D Change 1」
通常運航時の客室高度8,000フィートに関する認証上の考え方を確認しました。連邦航空局

FAA「Helios Airways Flight 522 / Boeing 737-300」
737-300の与圧システムと、与圧喪失・低酸素症に関する事故教訓を確認しました。